海外に相続財産がある場合国際相続の弁護士

海外に相続財産がある場合海外に相続財産がある場合

近年は、海外に滞在、居住することも珍しいことではなくなり、それに伴い、海外の金融機関に口座を開設することや、海外送金等がごく普通に行われています。さらに、資産家による積極的な海外投資も盛んになっていますので、海外に預金や不動産などの財産があることは珍しくなくなりました。
国際相続が発生する最もシンプルなケースは、被相続人及び相続人の全員が日本人で日本に住所を有していて、相続財産の一部が海外にある場合といえます。
このような国際相続の場合、どのような問題が生じるのでしょうか。

1 遺産相続(遺産分割)の問題海外に相続財産がある場合

相続財産が海外にある場合でも、相続人同士で協議をして遺産分割をします。
ただ、海外財産について、日本の法律に従って遺産分割をしたとしても、必ずしも遺産分割の効力が認められるとは限りません。例えば、相続財産が絵画や骨董品などの動産であれば、日本に持ってくればよい話ですが、不動産や預金については現地で手続きを踏まない限り、自分名義にすることはできません。

特に、相続財産に不動産がある場合、注意すべき点があります。
日本の通則法は、相続に関して動産と不動産の区別をしない、相続統一主義を採用しています。
諸外国の中には、不動産の相続については不動産所在地の法律によって処理する旨を定めていることがあります。これを「相続分割主義」と呼びます。米国などはこの主義を採用しています。
相続分割主義を採用している国との間で国際相続が発生した場合、日本の国際私法の解釈だけでは解決しない場合がありますので注意が必要です。

相続統一主義と相続分割主義
相続統一主義相続財産の種類や所在地等について区別することなく、全ての相続関係を被相続人の本国法で決めるという考え方。
さらに住所地法主義を採用する国と本国法主義を採用する国に分かれる。
【住所地法主義】スイス、デンマークなど
【本国法主義】ドイツ、イタリア、日本、韓国など
相続分割主義相続財産を現金・預金などの動産、土地や建物などの不動産に分け、動産は被相続人の本国法、不動産はそれが所在する国の法律によるという考え方
【採用国】アメリカ、イギリス、フランス
日本人が米国に土地を残して死亡した場合

日本人が米国に土地を残して亡くなった場合、相続の準拠法は「被相続人の本国法」(法の適用に関する通則法36条)によるとあるため、日本の法律によって手続が進むことになりますが、一方、米国では相続分割主義を採用しているので、相続財産の種類や所在地により準拠法が異なります。
相続財産が不動産(土地)の場合は、所在地法で手続が進むことになるので、この土地については米国の法律に従うことになります。
このように、準拠法が対立する場合も多く、これが国際相続をさらに複雑にする理由です。なお、実務上は、国外の財産は国外の法律に則って手続きが進められる可能性が高く、統一的な解決が徹底されないのが国際相続の難しい点といえます。

米国人が日本に土地を残して死亡した場合

被相続人が米国人の場合、日本の通則法第36条によれば、その相続は米国の法律で処理することになりますが、米国の国際私法にあたる法律は、土地の相続に関しては土地の所在地国の法律によるとしています。つまり日本の土地については日本の法律に基づいて処理されることになります。
通則法第41条本文では「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による」と定めていますので、この場合は日本の法律が準拠法となります。

被相続人が外国人の場合、すべて日本の法律によって律することはできないことになり、日本と外国の私法と税法の2つセットで適用するという複雑な状況になります。

国外に、不動産や預金等の資産がある場合は、事前に金融機関や現地の専門家に相談して、どのようにすれば、名義の変更ができるのか等を相談した上で、遺産分割を進める必要があります。

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2 税務(国際相続税)の問題海外に相続財産がある場合

被相続人も相続人も国内に住所がある場合、居住無制限納税義務者に該当し、国内・海外全ての財産に相続税がかかります。つまり、海外にある財産も日本の相続税の課税対象となります。
海外の財産が相続税の課税対象とならないのは、被相続人及び相続人が5年を超えて日本に居住していないケースなど制限納税義務者に限られます。

なお、国内に住所があるか等は、相続発生又は贈与時点を基準とし、この場合の住所とは各人の生活の本拠をいいます。ただ住民票上の住所が基準になる訳ではなく、生活の本拠であるかどうかは客観的事実に基づいて判断されます。

納税義務の範囲
相続人
被相続人
前提:日本国籍あり
国内に
住所有
国内に住所なし
日本国籍あり日本国籍なし
海外移住
5年以下
海外移住
5年超え
国内に
住所あり
国内に
住所なし
海外移住
5年以下
海外移住
5年超え

無制限納税義務者(黒枠)国内・海外財産ともに課税
制限納税義務者国内財産のみに課税

相続税の課税対象となる財産
A
被相続人
B
相続人
納税義務者の区分課税対象
住所住所国籍国内財産海外財産
日本日本日本居住無制限納税義務者
海外居住無制限納税義務者
海外日本非居住無制限納税義務者
海外制限納税義務者×
海外日本日本居住無制限納税義務者
海外居住無制限納税義務者
海外日本(A・Bいずれも海外居住5年超)
制限納税義務者
×
(上記以外)
非居住無制限納税義務者
海外制限納税義務者×

相続財産が海外にあるケースでは、相続税の課税問題の前に、その海外の財産に係る法律(相続法、財産法等)に関連する問題が生じ、日本においても海外においても相続法等の法律関係が併存することになります。つまり、海外財産を相続した場合、日本と海外の両方で税金がかかる場合があります。その場合は、二重課税のより、損するわけではなく、いったんは二重課税となりますが、外国税額控除により、海外で納めた税金を日本の相続税課税時に税額控除できる制度がありますのでご安心ください。

【外国税控除】

外国税額控除の限度額は次のいずれか小さい金額になります。

①その外国税額
②相続人が国内で納付する相続税額×(外国税が課された財産額/相続などにより取得した財産総額)

なお、外国税額の納付が日本より後に行われる場合、実務上は、日本で期限内申告を行った後に更正の請求手続きを行い、還付を受けるのが一般的です。
いずれにしても、外国税額控除を行う場合は、その実務に精通した専門家に対応を依頼する必要があります。

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3 国外財産の所有の状況海外に相続財産がある場合

一部の富裕層を中心に、海外投資ブームが起こっています。
海外不動産でいうと、経済成長とともに不動産価格の上昇が大いに期待できる海外不動産、特に米国や東南アジア地域などの海外不動産投資に人気があるようです。国内の不動産投資は、大都市圏の一部を除き頭打ち状態といわれ、売却・譲渡で利益を得るキャピタルゲインは、現在ではほとんど行われず、現在はマンション経営をはじめとするインカムゲインが主流になっています。
そこで、将来性のある海外不動産に興味を持つ方が増えているようです。

また、外貨預金や海外の株式・債券を対象とする投資信託など海外資産を投資対象とする商品は、今やあたり前です。以前は日本で資産を保有していることが安全とされてきましたが、ここ数年でその状況は一変し、海外で銀行口座を開設して、外貨で資産を保有しようとする動きが加速しています。その流れの中で、海外に移した資産を有効活用する為に、海外の金融機関で販売されている金融商品を買って運用しようとする人も増加しているといわれます。低金利、長引く株価の低迷、円安への期待感、高い税率など様々な要因が海外投資ブームの起因となっているようで、資産がある方にとっては「ある程度の資産は海外に避難させておきたい」というのが本音のようです。

(1)税務調査の傾向

近年の相続税における税務調査の対象は、海外関連事案に重点を置いているといっても過言ではありません。
海外に滞在、居住することも珍しいことではなくなり、海外の金融機関に口座を開設することや、海外送金等がごく普通に行われ、自然と海外に資産が蓄積されている場合もあり、これらの運用益が所得税の課税から漏れる事例が多くなっています。
さらに、先に説明したとおり資産家による積極的な海外投資も盛んになっています。
海外に財産を持ち出すことで、日本では課税されないと思っている方がいるかもしれませんが、現行の税制では、日本に居住している限り、日本国内の財産も海外の財産もすべてが相続税の対象になります。

海外に財産を移動させれば相続税の課税を逃れることができるという誤った考えや、海外財産にまで税務調査は及ばないであろうという安易な考えから、相続税を申告しない事例が増加しているといわれます。
海外関連事案の調査の増加により、海外財産の申告漏れ件数も増加しているといわれています。また、平成26年から始まった「国外財産調書制度」によって、海外資産調査の強化の傾向はさらに続くとみられます。

(2)国外財産調査提出制度

近年、海外財産の保有が増加傾向にある中で、海外財産に係る所得税や相続税の適正な課税・徴収の確保を図る観点から、平成24年度の税制改正において、海外財産の保有者にその保有する海外財産を申告させる仕組みが創設されました。これを、海外財産調書提出制度といい、平成26年1月から施行されました。

その年の12月31日においてその価額の合計額が5000万円を超える海外財産を有する居住者(非永住者を除く)は、翌年3月15日までに、財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した「海外財産調書」を、税務署長に提出しなければならないこととされました(内国税の適正な課税の確保を図るための海外送金等に係る調書の提出等に関する法律(以下「国送法」)5①)。

非永住者・・・日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である方。
海外財産・・・海外にある財産。ただし、海外にあるかどうかの判定については、財産の種類ごとに行うこととされる。平成25年度の税制改正において、海外財産調書に記載すべき海外財産の所在の判定について、その取扱いが一部変更されました(例:「不動産又は動産」は、その不動産又は動産の所在。「預金、貯金又は積金」は、その預金、貯金又は積金の受入れをした営業所又は事業所の所在)。
海外財産の価額・・・その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」により、また、「邦貨換算」は、同日における「外国為替の売買相場」によることとされています。

インセンティブ措置

国外財産調書は、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、適正な提出を確保するため以下のインセンティブ措置等が設けられています(国送法6、10)。

加算税の軽減措置(優遇措置)

調書を期限内に提出した場合に、記載された国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、その財産に係る加算税が減額されます。

加算税の加重措置

調書の提出がない場合又は提出された調書に国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関して所得税の申告漏れが生じたときには、その国外財産に係る加算税が加重されます。

罰則の適用

正当な理由なく期限内に提出がない場合又は虚偽記載の場合に、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が適用されます。
※罰則の適用は、国外財産調書制度に係る周知期間の確保等の観点から、平成27年1月1日以後に提出すべき調書について対象となります。

提出状況について

本制度の創設後、初めての集計によると、平成25年12月31日における財産の保有状況について、平成26年3月17日を期限とする調書の提出状況は以下のとおりになります(国税庁のデータより)。

総提出件数は、全国で5,539件

局別の件数は、東京局3,755件(67.8%)、大阪局638件(11.5%)、名古屋局457件(8.3%)の順に多く、この3局で全体の約9割(88%)を占めています。

海外財産の価額の総合計額は、約2兆5,142億円

局別の総財産額に占める割合についても、東京局20,989億円(83.5%)、大阪局1,793億円(7.1%)、名古屋局931億円(3.7%)の3局で約9割(94%)となっています。

財産の種類別の総額としては、有価証券が最も多く、1兆5,603億円、次いで預貯金3,770億円、建物1,852億円、土地821億円、その他2396億円となっています。

財産の種類と総額
財産の種類総 額構成比
有価証券
1兆5,603億円
62.1%
預貯金
3,770億円
15.0%
建 物
1,852億円
7.4%
土 地
821億円
3.3%
貸付金
699億円
2.8%
上記以外の財産
2,396億円
9.5%
合 計
2兆5,142億円
100.0%
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