国際相続におけるプロベート国際相続の弁護士

1 国際相続に備えておくべきこと国際相続におけるプロベート

海外に財産を所有されている方は、将来相続が発生した場合についてあらかじめ備えておく必要があります。また死亡時(相続)だけでなく、事故や病気などで本人による財産の管理が難しくなった場合に備え、家族が財産の管理や処分を簡単に行えるように配慮しておくことも重要です。
何も準備をしないまま相続が発生した場合、家族に相当な負担をかけることになります。通常の相続であっても、モメない相続のためには、必ず事前の対策を行います。海外に相続財産がある場合や、国際結婚などをしてご家族に外国籍の方がいる場合など、国際相続が生じる場合は、手続きはさらに煩雑になり、何も事前準備をしていなければ、相続人は途方にくれてしまいます。必要以上の費用を払って手続きを行う状況になったり、せっかくの資産にもかかわらず、どうしてよいのか分からず、海外資産をそのまま放置せざるを得なくなるという最悪な事態もあり得るでしょう。

まずは所有する海外資産の概要をまとめ、財産目録を作成しましょう。
そして将来相続が発生した際に何が問題になるかを整理しておきます。
相続(遺産分割)面だけでなく、税務面で問題は生じないのか等、確認すべきことはたくさんあります。
国ごとに異なる相続制度、税務制度の側面から検討し、場合によっては専門家と相談の上、事前に資産を整理(処分)することも検討します。また、スムーズな手続きのために遺言の作成や生前信託の設定など、事前に行える対策を検討します。

PAGE TOP

2 国際相続でのプロベート(検認裁判)国際相続におけるプロベート

財産が把握できたら、国際相続の相続手続きにおいて、プロベート(検認裁判)と呼ばれる裁判手続きが必要となる国々かどうか確認をしましょう。

プロベートによる相続手続きは、日本の相続手続きとは大きく異なり、相当な費用と時間がかかり、相続人にとってはかなりの負担になります。現在プロベート手続きを採用している主な国は、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、マレーシアなどです。
プロベートは、時間も費用もかかる、プロベート期間中、財産を自由に利用・処分できない場合がある、プライバシーが確保できないなど、多くのデメリットがあるため、プロベートはできれば避けたい、または避けるべきと考えます。ただし、国や地域によっては、プロベート手続きの簡易化が進み、それほど負担とならない場合もありますし、あえてプロベートを経たほうがよい場合もあります。
一般的に、プロベートは回避したほうがよいといわれていますが、プロベートのメリットもしっかりと把握した上で、個別の状況を総合的に判断し、事前に対策を考えることが重要といえます。

財産目録を作成することで海外に所有する財産について整理し、次に、財産のある国、地域においてプロベート手続きが行われるのかどうかを調べる必要があります。その上で、この面倒なプロベート手続きを回避する手段があるのかを確認します。もちろん、プロベート手続きがない国でも、海外財産の名義変更や現地での税申告などの複雑な相続関連手続きは、必ず発生します。
事前の十分な準備で、相続時に想定される負担を、ある程度軽減させることが可能です。

プロベートの詳細はこちら PAGE TOP

3 プロベートの回避の方法国際相続におけるプロベート

事前にプロベートを回避またはその負担を軽減する方法として、財産共有名義化、受取人指定、生前信託設定、海外遺言書作成など様々な方法があります。
例えば、米国を例にすると、プロベートを回避する方法としては、次の(1)~(4)の方法が挙げられます。また、プロベートは回避できないものの、比較的簡単で費用も安くできる方法として、(5)の方法があります。

(1)少額財産

米国では、州が定める一定額以下の財産については、プロベートを経ずに相続手続きを行うことが認められています。また、州によっては、簡易なプロベートで済む場合もあります。
つまり、財産があるからといって必ずしも、プロベートが必要ということではありません。そのため、財産の有無だけでなく、金額についても確認をしておく必要があります。

(2)財産共有名義化

米国では、財産を生存者受取権付きの共有名義にすることにより、相続開始後、プロベートを経ずに他の共有名義者へ財産を承継することができます。ただし、共有名義にさえすれば必ずプロベートを回避できるというわけではなく、共有の形式によって回避できない場合もあります。
共有名義の財産には、生存者受取権が付されているものと付されていないものがあります。前者の場合は、共有者の1人が先に亡くなったとき、この財産に係る権利は他の共有名義人に自動的に移ります。一方、後者の場合は、共有者の1人が亡くなっても、その人の持分が他の共有者に自動的に移転される訳ではありません。
共有形態には次の種類があります。

①生存者受取権が付された「含有」 Joint Tenancy with Right of Survivorship

合有とは、生存者受取権が付された形で、複数の人が平等に財産を所有する形態です。
合有で所有されている財産では、合有者の1人が亡くなったときに、プロベートを経ずに他の合有者に自動的に権利が移転します。ただし、最後の所有者が亡くなった場合はプロベートを回避することはできません。

②夫婦合有 Tenancy by The Entirety

夫婦による合有の場合、合有ではなく、夫婦合有の形態で権利を取得することになります(すべての州で採用されている訳ではありません)。夫婦のー方が亡くなると、プロベートを経ずに自動的に配偶者に権利が移転します。
①の合有との違いとしては、婚姻関係にあるカップルに限定されていること、また自分の持ち分であっても他の合有者(配偶者)の同意を得ずに処分できないことがあります。

③生存者受取権が付された「夫婦共有財産」 Community Property

夫婦共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に取得した財産は、たとえその財産が一方の単独名義となっていたとしても、夫婦の共有財産となる制度です。贈与や相続で個別に取得したものなど一部の例外を除き、夫婦がそれぞれ1/2ずつ財産を所有することになります。この制度を採用している州では、契約書で別途の取決めをしない限り、自動的に夫婦共有財産となります。
夫婦共有財産には、生存者受取権が付されているものと付されていないものがあります。前者の場合は、共有者の1人が先に亡くなったとき、この財産に係る権利は他の共有名義人に自動的に移り、プロベートを経る必要はありません。一方、後者の場合は、共有者の1人が亡くなっても、その人の持分が他の共有者に自動的に移転される訳ではなく、プロベートを回避することができません。
夫婦共有財産制度により所有している財産については、その財産を売却あるいは抵当に入れる場合は、双方の同意が必要となります。生存者受取権が付されていない場合や別途受取人が指定されていない場合、遺言書などで指定されていない場合は、基本的には相続の手続きとしてプロベートが必要となります。なお、本制度は州によって内容が異なり、また法律は度々変更されているようですので注意が必要です。

④生存者受取権が付されていない「夫婦共有財産」 Tenancy in Common

日本の共有と同じような意味を持つ共有形態です。
生存者受取権が付されていないため、共有者の1人が亡くなっても、他方の共有者に当然に権利が移転するわけではありません。亡くなった人の持分割合に係る相続手続きにおいて、プロベート手続きを行う必要があります。

Joint Tenancy with Right of Survivorship
生存者受取権が付された「合有」
プロベート回避可
Tenancy by The Entirety
夫婦合有
Community Property(with Right of Survivorship)
生存者受取権が付された「夫婦共有財産」
Community Property(without Right of Survivorship)
生存者受取権が付されていない「夫婦共有財産」
不  可
Tenancy in Common
生存者受取権が付されていない共有

以上、説明したとおり、「生存者受取権が付された共有形態」であれば、プロベートを回避することは可能です。一方で「共有」には税務の問題が発生するおそれがあります。
共有名義化にあたり、日米それぞれの贈与税についても考慮する必要があります。財産の共有名義化には、その時点で日本と海外の双方において贈与税が発生する可能性があるのです。

資金を拠出していないのに所有権を持つということは、もともと財産の取得資金を拠出した人からの贈与とみなされる可能性があるからです。つまり、海外でも贈与税が発生したり、共有名義にした時点では税金がかからなくても、共有者の死亡後に相続税に相当する税金が課されたりする可能性があります(米国では、銀行口座及び証券口座の場合、資金を拠出した人が自由に全額引き出せる状態であれば共有名義口座を開設した時点で贈与にはなりませんが、その後、資金を拠出していない共有名義者が預金及び資金を引き出した段階で贈与と判断されます)。
最近、日本の税務当局は、特に海外財産における共有名義に対し、贈与税や相続税の申告漏れの可能性が高いとして注意を払い始めているようです。プロベート回避だけを目的とした安易な共有名義化は、かえって税金を余計に支払う可能性もあります。共有名義にする場合は、必ず税務の専門家に相談しましょう。

(3)受取人指定

預金口座や証券口座などの金融資産の場合、相続が開始したときの受取人を金融機関にあらかじめ届けておくことで、プロベートを避けることが可能な場合があります。
一般的に、預金口座については「死亡時受取人指定口座」、証券口座については「死亡時承継人指定登録」と呼ばれ、極めて簡単な手続きでプロベートを回避することが可能です。指定した受取人が先に死亡した場合に備えて、代替の受益者を指定しておくこともできます。
まずは、お持ちの口座の各金融機関に受取人指定ができるかどうか確認をしてみましょう。
また州によっては、不動産についても受取人の指定制度を採用している場合がありますので、合わせて確認をしてみましょう。

(4)生前信託(リビング・トラスト)

生前信託とは、遺言と同じように、本人が死亡したときに財産を誰にどのように承継させるかを、あらかじめ指定できる書類です。遺言ではプロベートを回避することができませんが、生前信託ではプロベートの回避が可能となる点が、大きな違いといえます。自身の相続が発生したときに、プロベートを回避しながら財産を承継させる方法として、米国で広く利用されています。
ただし、生前信託の活用によりプロベートを回避できるのは、あくまで信託した財産に限られ、信託を設定した後に取得した財産などは、新たに信託の受託者名義に変更する必要があります。
生前信託設定にあたっては、信託契約書の作成や名義変更手続きなどの費用が生じますが、州によってはプロベート手続きが非常に煩雑で生前信託以上の費用がかかる場合がありますので、そのような州では生前信託が使われます。

(5)遺言

財産がある国や地域の法律に基づいて、あらかじめ遺言を作成しておく方法です。
あらかじめ遺言を作成しておくことで、プロベートの回避まではできませんが、プロベートをスムーズに行うことが可能となります。また、遺言の作成は、生前信託ほど費用がかかりません。

PAGE TOP
©2014 国際相続の弁護士 All Rights Reserved